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『昭和三十六年六月二十八日のことだった。むし暑い梅雨ばれの一日もようやく終りに近づいたが,暑気がまだ空中に残っている五時頃,その山裾の細い道を,上田宏が自転車を押して下りて来たことから,この物語は始まる。』
大岡昇平さんの「事件」(1977年)の書き出しです。
「事件」は刑事訴訟の手続を忠実に再現した作品です。
上田宏と坂井ハツ子の間で何があったのか。
はたして,それは裁判で明らかになるのか。
これは読んでのお楽しみ。
事件当時のアリバイを証明するために,落ち武者の幽霊を裁判の証人にするのが,三谷幸喜監督作品「ステキな金縛り」(2011年)。
これは事実がはっきりわかります。
一体,だれの言うことが本当なのか,証言する人物によって,話の内容が異なる,というのが,黒澤明監督作品「羅生門」(1950年)。
霊媒師が登場して,死んだ被害者の霊にまで証言させるが・・・
これは観てのお楽しみ。
さて,過去にあった出来事を確かめようとしても,タイムマシンがなければ真実はわかりません。
まさに,神のみぞ知る。
刑事裁判は,被告人が罪を犯したのか,犯していないのかという客観的な真実を決定する場ではありません。
刑事裁判で,裁判員と裁判官は,検察官が主張する事実が,提出された証拠からみて,まちがいないと確信できるかどうか,を判断するのです。
検察官の主張がまちがいないと確信できれば「有罪」です。
検察官の主張がまちがいないと確信できなければ「無罪」です。
言いかえると,「有罪」か,「有罪ではない」か,を判断するのです。
検察官の主張が正しいのか,まちがっているのか,どっちかわからないときは,もちろん「無罪」です。
刑事裁判は「人を裁く」手続ではありません。
人を裁くことができるのは神のみです。
ある人間がほかの人間を裁くことができる,と考えるのは傲慢です。
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