パンドラ　☆　あさもりのりひこ　No.５１

　ゼウスは，職人の神ヘパイストスに命じて，この世で一番美しいパンドラを作らせました。

　パンドラは，神々からさまざまな贈り物を授けられました。

　美の女神アフロディーテからは美しさを，アポロンからは音楽と癒やしの力を，そして，ゼウスからは好奇心を与えられました。

 

　ゼウスは，パンドラをエピメテウスのところへ連れて行かせました。

　エピメテウスは，パンドラの美しさに心を奪われて，パンドラを妻にしました。

 

　エピメテウスの家には，兄プロメテウスが残していった黄金の箱がありました。

　黄金の箱には，病気，盗み，ねたみ，憎しみ，悪だくみなど，この世のあらゆる悪が閉じ込められて，人間の世界に行かないようにしていたのです。

　プロメテウスは，弟エピメテウスに「この箱だけは，決して開けてはならない」と命じていました。

 

　パンドラは，黄金の箱を見るなり，すばらしい宝ものが入っていると思いました。

　パンドラは，夫エピメテウスに，黄金の箱をあけてほしい，と頼みました。

　しかし，エピメテウスは，兄プロメテウスとの約束を守って，決して箱をあけようとしませんでした。

　

　パンドラは「あなたが箱をあけてくれないのなら，わたしは死にます」と言いました。

　エピメテウスは仕方なく，兄プロメテウスとの約束を破って，箱をあけました。

　箱をあけたとたん，箱の中から，病気，盗み，ねたみ，憎しみ，悪だくみなどのあらゆる悪が人間の世界に飛び出しました。

　

　エピメテウスがあわててふたを閉めると，箱の中から弱々しい声がしました。

「わたしも外へ出してください・・・」

　パンドラが「おまえは，だれなの？」とたずねると，箱の中から声が返ってきました。

「わたしは，希望です」

　

　プロメテウスが，もしものときのために，箱に希望を忍び込ませていたのです。

　パンドラは，箱をあけて，希望を外に出しました。

　こうして，人間は，希望を持つようになったのです。