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殺虫剤や農薬に含まれる合成化学物質は,生物の性発達を阻害する。
シーア・コルボーンほか著「奪われし未来(増補改訂版)」(翔泳社)に詳しい。
以下,頁数を書いたのは同書の引用か所である。
まず,合成化学物質が鳥の性発達を阻害する事例を紹介する。
「オンタリオ湖やミシガン湖といった,特に汚染状況がひどい地域に見られるセグロカモメのコロニーで,通常の2倍の卵が入った巣を発見していた。これは巣の主が,オスとメスではなく,メス同士のつがいであることを物語っていた」(44頁)
「比較的汚染されていない地域にある,アメリカオオセグロカモメとカリフォルニアカモメのコロニーから採集した卵に,4種類の物質を注入してみたのである。その物質とは2種類のDDT,DDE(DDTの分解物質),そして同じくエストロゲンのような働きをするとされる合成殺虫剤メトキシクロルである。・・・オスの生殖器官に「メス化」が生じたのだ。・・・投与する物質の量をさらに増やしてみると,今度はなんと,通常はメスにしか見られない輸卵管までもが生じた。体内にはこうした明らかな異常が現れていたものの,外見上はまるで正常そのものだった」(45頁)
DDTとはdichloro-diphenyl-trichloroethane(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)の略であり,かつて使われていた有機塩素系の殺虫剤,農薬である。
日本では1971年5月に農薬登録が失効している。
エストロゲンは,ステロイドホルモンの一種であり,一般に卵胞ホルモン,または女性ホルモンとも呼ばれる。
「成長過程でエストロゲンに暴露したオスの脳と生殖器官には異常が現れ,またその性行動も完全に阻害されてしまう」(45頁)
「ニワトリやニホンウズラの卵にエストロゲンを注射すると,孵化したオスは成鳥になっても,群れをつくったり,オス特有の「威張った」歩き方もせず,つがい行動にも一切関心を示さなかったのである」(45~46頁)
つぎに,鳥類を含む生物一般への合成化学物質の影響について。
「出生前ないしは出生直後に過剰なエストロゲンに暴露したラット,マウス,ハムスター,モルモットのメスには決まって生殖行動の「オス化」が見られるのである」(106頁)
「両生類から鳥類,齧歯類,イヌ,ウシ,ヒツジ,アカゲザルにいたる多種多様な動物を観察した結果,高濃度のエストロゲンないしはアンドロゲンに暴露したメスは「オス化」しやすい」(106頁)
アンドロゲンは,ステロイドの一種で,生体内で働いているステロイドホルモンのひとつ。
雄性ホルモン,男性ホルモンとも呼ばれる。
アンドロゲンは雄の副生殖器の発育および機能を促進し,第二次性徴を発現させる作用をもつ物質の総称である。
さらに,合成化学物質の人間への影響について。
「野生生物の研究は,人体に及ぼす汚染物質の影響を考える上でも有意義な研究であり,汚染の危険度を計るにはうってつけの指標である」(44頁)
「化学物質が胎盤を難なくすり抜け,胎児の成長を阻害して,数十年後に甚大な影響を及ぼしうる事実が明らかになった」(108頁)
「大人にはさしたる影響を及ぼさない薬物や化学物質でも,劇的な成長を遂げつつある胎児には,生涯にわたる深刻な影響を及ぼすおそれがあるのだ」(109頁)
「子宮内でDESに暴露していると,ヒトとマウスの別なく,生殖器官に同じ障害が生じる」(109頁)
DESとは,ジエチルスチルベストロール(Diethylstilbestrol)の略で,かつて流産防止剤などに用いられた合成女性ホルモン(合成エストロゲン)の薬剤である。
そして,結論である。
「ホルモン様合成化学物質が,生殖系を阻害し,神経系や脳を変化させ,免疫系を撹乱するおそれがある」(260頁)
「問題の化学物質に汚染された動物には,異常なつがい行動や巣を置き去りにするといった行動が目に見えて増している。合成化学物質が引き金となって,正常な性特徴が阻害され,場合によっては,メスの「オス化」やオスの「メス化」が生じる危険もある」(260頁)
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近藤央子 (金曜日, 18 10月 2019 12:26)
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朝守令彦 (金曜日, 18 10月 2019 13:02)
どおぞ