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「野党のあるべき姿」というものがもしあるとすれば、それは「有権者にとって政策的選択肢の多様性を保証する」ことに尽くされると思います。
2017年9月13日の内田樹さんのテクスト「若者の政治参加についてのアンケートにお答えした」(前編)を紹介する。
どおぞ。
高校生からこんなメールが届いた。
「突然ですが、メールにて失礼致します。
現在、私の学校では『答えが無い問題の解決策を探求する』というテーマのもとで、各グループに分かれて、経済や医療等の様々なジャンルから、テーマ設定をし、課題研究活動を行っています。
私のグループでは、『学生運動とこれからの政治参加』という主題で、60年代安保闘争から、SEALDsの活動まで、国内外の政治運動の比較を通じ、今後の政治参加には何が必要かという事を研究しています。
その活動を進める中で、いくつか浮かんできた疑問について意見を聞かせて頂きたく、メールを送らせて頂きました。
以下、質問事項になります。
〈質問1〉
民主党は野党として機能していると思いますか。
又、野党のあるべき姿とは、どのようなものだと考えますか。
〈質問2〉
現代の、10代~20代の若者は政治への関心が高いと思いますか。
可能であれば、理由も教えて頂けると有難いです。
〈質問3〉
国民の政治参加の方法は、投票やデモ以外では、どのような方法があると思いますか。
〈質問4〉
SNSは活発な政治討論の場になりうると思いますか。
お忙しい中かと思いますが、お返事を頂けましたら、幸いです。」
なかなか興味深い質問だったし、文章がきちんとしているのが気に入って、すぐに返事を書いた。以下が返信。
「こんにちは。内田樹です。
メール拝受致しました。
なかなかよい課題ですね。ご質問について、僕も「正解」を知っているわけではないのですが、個人的な意見を述べたいと思います。
〈質問1〉
民主党は野党として機能していると思いますか。
又、野党のあるべき姿とは、どのようなものだと考えますか。
民進党のことを質問されているのだと思いますが、民進党は野党としてはかろうじて機能しているとは思います。
ただ結党以来綱領的な整合性・一貫性がない政党で、選挙のたびに「風」頼みで公約がふらつくのがなかなか信頼されない理由だと思います。
「民意におもねる」というのは民主制下の政党としてある意味では当然のことなのですが、それにしてもあまりにも「腰が据わっていない」と民意の側でも不安になります。
それでも、今の日本では民進党のような政党(民意をつかみ損ねてふらふらしている政党)はここ一つしかないので、政党政治の多様性という観点からすれば、「ないよりはあった方がいい」と私は思っています。
「野党のあるべき姿」というものがもしあるとすれば、それは「有権者にとって政策的選択肢の多様性を保証する」ことに尽くされると思います。
ですから、共産党のような綱領的に整備された上意下達の一枚岩政党や、公明党のようなこれも一枚岩の宗教政党や、民進党のような党内ばらばらで「なんだかよくわからない政党」のように、それぞれ綱領も組織原理も異なる政党が併存している日本の政党政治の状態は決して悪いものではないと思います。まあ、そういうのも「あり」という程度ですけれど。