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つまり「あれほど権力的にふるまえるのは、ほんとうに権力を持っているからだ」という人々の思い込みが彼の権力基盤だったということである。
2022年9月22日の内田樹さんの論考「国葬について」をご紹介する。
どおぞ。
国葬についてはいろいろな媒体に寄稿した。これは「赤旗」に求められたコメントだったが、没になった。岸田首相が「安倍元首相ほどの悪ではなかった」というあたりがお気に召さなかったようである。
まさか国葬への反対がこれほど高まるとは首相は予測していなかっただろう。法的根拠がなくても、国会の審議を経なくても、閣議決定で決めたことを国民は最終的には黙って受け入れる。安倍政権の8年間はまさにそれを証明してきた。岸田首相はその「成功体験」を真似ただけである。
安倍元首相のふるった強大な権力はある種のループ構造になっていた。どれほど国民が反対しても、野党が反対しても、合理的根拠がなくても、彼はやりたいことを強行した。すると、国民は「そんな無茶ができるのは、それを裏付けるだけの強大な権力を有しているからだ」と推論した。そして「それほど強大な権力者であるなら抵抗しても無駄だ」という諦めの境地に至った。つまり「あれほど権力的にふるまえるのは、ほんとうに権力を持っているからだ」という人々の思い込みが彼の権力基盤だったということである。よくできた仕組みだ。
だが、岸田首相は適切な法手続きを無視するというところは真似たが、国民に深い無力感を与えることまではできなかった。「もしかすると人の話を聴いてくれそう」に見えたからである。元首相を真似るなら徹底的に真似るべきだった。もう手遅れだが。