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「ゲームチェンジャー」は思いがけない時に、思いがけないところから、思いがけない人物として登場する。
2024年1月14日の内田樹さんの論考「年頭に思うこと」をご紹介する。
どおぞ。
能登の地震と羽田の飛行機事故で2024年は幕を開けた。これからの一年間の激動を予感させ不吉なものを感じた人が少なくなかったと思う。
今年は米大統領選挙がある。トランプが再びホワイトハウスの主になったら、米国の分断と凋落にはもう歯止めがかからなくなるだろう。
ウクライナ戦争の帰趨も視界不良である。プーチンもゼレンスキーも停戦を自分から言い出すことはできない。
ガザでの虐殺がいつ止まるのかも分からない。仮に停戦調停が成ったとして、パレスチナの戦後体制を誰がどうハンドルできるだろうか。中東のプレイヤーたちは誰もシナリオを提示していない。米国は二度と中東には深入りしたくないし、中国も様子見だし、ロシアには今は中東にかかわる余力はない。サウジかイランかトルコがキープレイヤーになるとしても、私たちには彼らが何を考えているのか、正直よく分からない。だから先が読めない。
台湾軍事侵攻の可能性についても確定的なことは分からない。台湾の総統選挙は民進党が勝った。台湾海峡の緊張はこれで高まることになる。
北朝鮮はいつも「不可解なこと」ばかりするせいで誰もあまり驚かなくなった。だからと言って金正恩がどこかで「想定外」に踏み出すリスクはゼロではない。
今年は「全く先行き不透明」ということである。それはどの時代も同じだから特に悲観的になる必要はない。「ゲームチェンジャー」は思いがけない時に、思いがけないところから、思いがけない人物として登場する。その時に肝をつぶさないように心の準備だけはしておこう。
日本はどうなるだろう。自民党政権は命脈が尽きると思う。どういうかたちで自民党支配が終わるのかは分からない。ただ、もう組織として復元力がなくなっているので、強い衝撃が加えられたら瓦解するだろう。効率的な管理された上意下達的な組織は過剰に同質化されて多様性を失うので「突然死」することが多いとリスク論は教えている。たぶんその教えは正しい。
でも、その後のことが見通せない。自民党が野党を巻き込んだ連立政権で延命を図るか。野党共闘による政権交代が成るのか。まったく予測がつかない。でも、「何か」が起きる。それは間違いない。